ウォーゲーミングの学術・政策連結:
英国の場合
(ロンドン大キングス校ウォーゲーミング・ネットワーク)
英ロンドン大学キングス校の研究者でキングス・ウォーゲーミング・ネットワークの主催者であるIvanka Barzashka(NATO専門家)が2019年に発表した論考 "Wargaming: how to turn vogue into science" を紹介します。
同論考は、英国が2015年以降の米国でのウォーゲーミング重視の動きに倣い、どのようにウォーゲーミングが展開しているのか紹介するとともに、ウォーゲーミングをいかに「科学化」すべきか等について論じいます。また、最近の英コネクションズ・オンラインで確認されたウォーゲームの「査読」についても記述されています。
著者のイヴァンカさんは英国・欧州のウォーゲーミング界の重鎮Philip Sabin教授の後継者とされていますが、Sabin教授とは異なり、英コネクションズとは若干距離感があります。しかし、学術的な戦略研究とウォーゲーミングをより「科学的」に結び付け、そうした営みの成果を実際の政策に反映させようと頑張っておられます。ウォーゲーミングの「科学化(必ずしもM&S化そのものではない)」には賛否両論あるでしょうが、不断の方法論的・分析的改善を志向する本ブログ筆者としては、むしろ肯定的です。
なお、本ブログ筆者が特に注目したのは、冒頭でRANDのDavid Shlapakが2017年に米下院公聴会で紹介した「ロシアによるバルト3国侵攻シナリオ」です。RANDでは同シナリオに基づく複数回のウォーゲームにより、ロシアが36~60時間でNATOのバルト3国防衛を打破してしまうという結果が出たそうです。しかし、戦車、歩兵戦闘車輛、自走砲等を増強した3重装備旅団を投入すれば、ロシアの計算を大幅に変える可能性がある由。
結局、ロシアが軍事侵攻したのはウクライナでした。また、米国もその他のNATO諸国も直接的軍事介入はしていません。しかし、だからといって、RANDが行ったウォーゲームが無意味だったと即断すべきではないでしょう。本ブログ筆者は、今後この点を研究してみたいと思います。
ちなみに、Shlapakの証言の動画は、イヴァンカさんの論考の本文にリンクがあるのでそちらからどうぞ。また、証言用に準備されたペーパーは、こちらからダウンロードできます。
(了)
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