論考紹介
「ウォーゲーミング史からの若干の教訓」
(Jorit Wintjes, "It's all about mentality - some lessons from wargaming history")
Jorit Wintjes博士(ヴュルツブルク大学、ユリウス=マクシミリアン大学上級講師)によるLinkedin上の論考 "It's all about mentality - some lessons from wargaming history" をご紹介します。
すべては心構えにかかっている ―― ウォーゲーミング史からのいくつかの教訓
要旨
- プロイセン陸軍におけるウォーゲーミング導入200周年(2024年)及びドイツ海軍でのウォーゲーミング導入150周年(2026年)に挟まれたこの時期に、ウォーゲーミング史から得られる教訓を回顧する。
- 19世紀初頭のプロイセンでは、ウォーゲーミングは当初若手将校の娯楽であったが、訓練予算不足の冬季教育手段として制度化され、やがて軍学校や部隊教育に広まった。
- その普及には公式の採用だけでなく、駐屯地ごとに生まれたウォーゲーミング・クラブの存在が大きく、将校が自由時間に遊びながら自然とウォーゲーミングに親しむ文化を形成した。
- これは英陸軍が1872年にウォーゲーミングを導入した際も同様で、ボランティア部隊や士官クラブ、下士官向けクラブが全国的に広まり、ウォーゲーミングの裾野を広げた。
- ここから得られる教訓は三点である。
- 抵抗を乗り越える必要性 ウォーゲーミングを教育手段として定着させるには反発を克服しなければならず、有力な推進者がいても十分ではない。継続的に実施できる「ウォーゲーミングを受け入れる心構え」が不可欠
- トップダウンだけでは不十分 参謀の教育課程など形式化された教育に組み込むだけでは形骸化の危険がある。むしろ日常の枠外でもウォーゲーミングを奨励し、自ら企画・実施できる人材を育てることが重要
- ウォーゲーミングは将校専用ではない ウォーゲーミングは「頭脳の体力訓練」として下士官も含むあらゆる階層に有益であり、軍事作戦に不可避な「摩擦」への柔軟な対応力を養うため、全指揮系統で活用されるべき
- すなわち、ウォーゲーミングを軍事教育に根付かせるには、制度的導入と並んで、クラブ活動や草の根の普及を通じて「ウォーゲーミングに前向きな心構え」を醸成することが決定的に重要
ご参考迄
(了)
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