2022年8月29日月曜日

番外編 日露戦争回顧談に見る教訓

 番外編

日露戦争回顧談に見る教訓

『參戰二十將星 日露大戰を語る 陸軍篇』
(東京日日新聞社・大阪毎日新聞社、昭和十年(1935年))

 旧大日本帝國海軍の将官たちが太平洋戦争後に座談會を開催し各種反省を行ったことは有名であるが、旧陸軍の将官たちが日露戦争後に座談會で各種反省を行ったことは殆ど知られていない。

 尤も、戦後といっても、日露戦30年後のことであり、戦争当時は参謀、司令部員、隊長といった人たちが30年後に大将~少将になって新聞社主催の座談会で同戦争を回顧したのである。以下、個人的に記憶、否、記録に残しておきたい教訓である。今後増やしていきたい。

 なお、本書は昔神保町の古書街で購入したものだが、現在では国会図書館デジタルコレクションにてオンライン閲覧およびPDFダウンロードが可能である。(回顧卅年日露大戦を語る. 陸軍篇 - 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)

 なんと便利な時代であろうか。

気に入った件:

(1)「弾薬の不足から肉弾戦」(p. 71)

(2)「宣伝上手なロシア軍」(p. 112)

(3)「弾丸尽きて石合戦」(p. 121)

(4)「戦ひび勝ち乍ら亦々弾薬の不足」(p. 158)

(5)「輸送力少く補給に大困難」(p. 274)

(6)「腐り易くて困った白米」(p. 275)


「日露大戦で得た教訓」:

(1)国防整備途中で開戦
(2)国防の整備は平生から
(3)兵器不準備だった実例
(4)兵備の不備は国家の損害
(5)将来の兵備は航空機(←これは重要なので以下一部抜粋により特記)
 大島健一中将(日露大戦当時は兵站総監部参謀長)
 「われわれは将来どういうことに覚悟をし、努力をしなければならぬかといふと、私は日本の航空機の発達といふ点において最も必要を認めるのです。
 日本ほど航空界の幼稚なところはない。殊に欧米諸国は五ヶ年の大戦の間において非常な努力を払って、平時から五十年―半世紀研究を要するものを、それを僅か五年間でやってゐる。日本の陸軍はあの戦役の圏外に立って何等經驗を致さず苦痛を嘗めず、それがために兵器装備は何等改善されてゐません。(中略)
 私はあの欧洲大戦(第一次世界大戦)の時はロンドンにゐまして、ドイツの飛行機が毎晩々々市街の上へ来て、爆撃するその現場に出くはしてゐる。實に悲慘なものである。その當時新聞等には一切記事を禁止してゐましたが、戰後發表したのを見ると實に悲慘なものである。將來の戰爭には東京、大阪、京都、名古屋といふような日本の巨大な都市といふものが必ず爆弾で襲はれる。今日のやうな航空機に無關心を國民は將來慘酷な懲罰をうけるといふことはわかり切つてゐる。これはぜひ皆樣方の力で國民によく國防思想の普及徹底を鼓吹して頂きたいと思ふ。」(pp. 318-319)

(了)
 



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